はじめに
この記事は、前回の記事「修繕しても維持費が下がらない理由」の続きです。 前回同様、マンション管理組合の理事様や、ビルのオーナー様など、「予算の決裁権を持つ方」に向けて書いています。
私は現場の作業員です。理事会の中でどのような話し合いが行われているのか、その内情までは分かりません。
私が現場で出来る事は、点検や修理の報告書を提出し、ご依頼が有れば修繕の見積もり作成をメーカー担当者へ伝える、そして実際に工事をする。ここまで。
しかし、「プロセスは分からないが、外から見ているからこそ分かる、奇妙な構造」があります。
それは、「真面目に直せば直すほど、なぜか出口が見えなくなっていく」という現象です。
今回は、なぜそんなことが起きるのか。 現場と管理組合様の間で交わされる
「書類(報告書と見積書)」の仕組みから、その謎を解き明かしてみます。
機械式駐車場の修繕費用が膨らむ「出口のないループ」
私たちメンテナンス員の日課は、点検をし、悪いところを見つけ、報告することです。
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「モーターから異音がします」
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「チェーンが劣化して屈曲不良を起こしています」
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「絶縁抵抗値の低下(漏電のリスク)が見受けられます」
これらは事実です。嘘ではありません。そして、これを受け取ったオーナー様や管理組合様は、当然こう判断されます。
「壊れている、もしくは壊れそうなら、直してください(交換してください)」
至極真っ当な判断です。 しかし、ここに大きな落とし穴があります。 数年経って振り返ると、数百万円、数千万円をつぎ込んでいるのに、「結局、あと何年使えるの?」という不安だけが消えていない状態になっているのです。
なぜ「部品交換」を繰り返すと、維持管理の迷路に迷い込むのか
なぜ、毎回「正しい修理」をしているのに、状況が良くならないのか。 現場の視点で言うと、理由はシンプルです。
私たちが提出する提案が、常に「部品単位」だからです。
機械式駐車場は、数千個の部品の集合体です。 これらが一斉に壊れることはまずありません。「今日はスイッチ」「来年はチェーン」「再来年は制御部品」というように、順番に寿命を迎えます。
このサイクルの中で、
1つの部品が故障して緊急対応が発生→故障部品をピックアップして交換が必要となる。
この時、メーカーの手元から出る見積書は、あくまで「その部品を直す費用」だけです。 全体の撤去費用(数千万円~億)に比べれば、部品交換(数万~数百万)は安く見えます。
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「全体を変えるのは大変だけど、この部品代なら予算内だ」
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「これを直せば動くようになるなら、直そう」
その都度、この判断が繰り返されます。 つまり、「全体をどうするか」という大きな議論をする隙がないまま、「目の前の部品を直す」という小さな決断だけが積み重なっていく構造になっているのです。
皆が役目を果たしているから立ち止まれない
この構造の怖いところは、「誰も悪くない」という点です。
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保守会社やメーカーは、不具合を報告する義務があります(放置すれば事故になるからです)。
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理事会やオーナー様は、安全のために修理を承認します。
全員が自分の役割を正しく果たしています。 しかし、その結果として
「つぎはぎだらけで延命された、維持費の高い装置」が出来上がります。
気がついた時には、 「ここまでお金をかけて直したんだから、今さら撤去なんて言えない」 という状態になっている。駐車場を利用していない人からのプレッシャーも頭を悩ませるでしょう。
現場から見ていると、皆様が「やめ時」を逃してしまうのは、心理的な迷いというよりも、
「部品ごとの修理承認」というルーチンワークの中に、出口への分岐点が存在しないからのように見えます。
寿命が近い? 現場から見る“トラブルの多いフェーズ
私たち作業員が「一番判断が難しい時期だな」と感じるのは、装置が完全に壊れた時ではありません。
「お金さえ払えば、まだ動いてしまう、使えるパレットへの移動を繰り返していく時期」です。
完全に動かなくなれば、諦めがつきます。 しかし、「部品を変えれば動く」「空きがあるから移動させて現状維持しよう」という状態こそが、実は一番の落とし穴です。
このフェーズで、「直す」または、「放置」という選択肢(部品や部分単位の判断)を続けていると、いつの間にか
「撤去費用にあてる資金が無い」
「移動先も無くなって利用者がいなくなった」
「周期保全の費用を修理代で食いつぶしてしまった」
ということになりかねません。
つまり、この仕組みの一番の問題は、
「撤去を検討すべきタイミングが、書類上どこにも存在しない」ことです。
その見積書にサインする前に
「壊れたから直す」。 これは機械の管理として正しい姿です。 しかし、機械式駐車場に限っては、その真面目さが「終わりのない延命」への入り口になることがあります。
現場の私たちは、毎日機械に触れているので、
「ここは直すべきだが、もうお金をかけるべきではない」
という感覚的なラインを持っています。
例えば、錆の塗装や補修に関して言えば。一斉に装置全体が錆だらけになるとこはありません。
使用頻度や日当たり、雨風の受け方によって錆の進行にグラデーションがあるのに装置全体の塗装工事を高額な費用で行う必要はあるのかな?とただ疑問に思うことは有ります。
しかし、それは通常の点検報告書には書かれません。「塗装が必要です」や「部品単位で交換が必要です」の話しか出てこない書類の上では、見えなくなってしまうからです。
では、どうすればその「見えないライン」を見極められるのか?」
問題は、
点検報告書や見積書を何枚読んでも、
「いつ撤去を考えるべきか」は一切書いていないことです。
だから判断が遅れる。だから結果的に一番高くつく。
終わりのない「修繕ループ」から抜け出すために
私たち業者が提出する点検報告書は、あくまで「機械の状態」を報告するものであり、「お客様の最適な道を示すための書類」ではありません。
だからこそ、ハンコを押す前に、オーナー様自身が「業者と対等に話すための判断基準」を持つ必要があります。
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「部品交換」と「延命」の正しい境界線はどこか?
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点検員の「要交換」は、今すぐやるべきか、無視していいか?
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その見積額は、適正価格なのか?
これらは、公式の報告書には絶対に書かれません。 そこで、私が現場で10年間使い続けてきた「頭の中の判断基準(現場の一次情報!リミットスイッチ編)」を、一冊のマニュアルとしてまとめました。
今後は、部品別の延命判断マニュアルとしてシリーズ化していきたいと思います。
「50万円の見積書」に震えるのは、今日で終わりにしてください。 このマニュアルが、悩む皆様の「出口」になるはずです。
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