はじめに:この記事を読んでほしい方へ
この記事は、駐車場を利用する一般の入居者様向けの内容ではありません。
マンションの管理組合様や、オフィスビルのオーナー様など、「駐車場の予算(お金)を決める立場にある方」に向けた、現場のいち作業員からの報告書です。
私自身、現場作業員という立場で10年ほど機械式駐車場に関わってきました。
設計や経営、運用の専門家ではありませんが、日々「壊れる瞬間」「止まる直前」を見てきた側の人間です。
ここ数年、そんな私の元にオーナー様からこんなお声が後を絶ちません。
「高いお金を払って修繕しているのに、なぜか管理が楽にならない」 「むしろ年々、判断が難しくなっている気がする」
今日は、皆様が感じているその「違和感」の正体を、現場の視点で整理してお話しします。
【現状】修繕しても「赤字」?空き区画とハイルーフ車のジレンマ
築15〜20年を迎えた機械式駐車場において、部品の交換や修繕が発生すること自体は珍しい話ではありません。機械ですから、いつかは壊れます。
しかし最近は、「修繕を重ねても、状況が良くならない(むしろ悪化する)」というケースが急増しています。
この部品の保全周期が来たから交換してもらおう!錆が目立っているから塗装しなおしてもらおう!積み立てた修繕費用を使って駐車場は、どんどんキレイになっていきます。
しかし、お金が減るだけで修繕費用は少しも増えて行かない。投じた費用に対して、収益が今までよりも減っている。なんじゃこりゃ?
最大の理由は、「利用台数の減少」と「車の大型化」です。
15~20年前、主流だったのはセダンなどの「背の低い車」でした。 しかし現在は、ミニバンやSUVなど「背の高い車(ハイルーフ車)」が中心です。
その結果、駐車場に空きはあるのに、「今の車は物理的に入らない」という区画が増え続けています。
利用者が減れば、当然ながら入ってくる使用料も減ります。 しかし、機械を維持するコストは変わりません。つまり、「残った利用者(または管理費)で負担する1台あたりの維持費」は、年々重くなっていきます。
この流れ自体は、時代の変化であり、誰かのミスではありません。
【警告】「決断の先送り」が招く未来
問題なのは、この状況を放置すると、修繕の意思決定が「楽になるどころか、どんどん難しくなる」という点です。
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空き区画が増えても、巨大な鉄の塊(設備)は残る
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設備が残る限り、安全確保のための点検と修繕義務は消えない ※国土交通省の安全対策ガイドライン
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修繕しても、入る車がないため利用率は回復しない
- さらに、自治体の定める附置義務も考慮しなければいけない ※附置義務とは?
この悪循環が続くと、その機械式駐車場は、「思い切って撤去する決断」もできず、 「自信を持って維持する覚悟」も持てない。 そんな「どっちつかずの金食い虫」になってしまいます。
その結果、面倒な判断は、次の理事、次の担当者へと先送りされ続けていくのです。
【原因】設計当時と利用実態がズレている
現場で見ていて感じるのは、「設計当時の前提」と「現在の利用実態」のズレです。
機械式駐車場は、「そこに何を停めるか」という前提ありきで設計されています。 その前提(車のサイズや需要)が変わってしまった以上、いくら古くなった部品を新品に交換しても、「使い勝手の悪さ」という根本的な病気は治りません。
極端な話、部品をすべて新品に交換した「初代iPhone」があったとしても、
今の生活でそれをメイン端末として使いたい人は、ほとんどいないはずです。
修繕そのものが悪いわけではありません。 ただ、「修繕すれば問題が解決する(元通りになる)」と勘違いしてしまうと、数千万円単位の判断を誤る可能性があります。
【心理】理事会を悩ませる3つの「見えない恐怖」
多くの管理組合やオーナー様が、以下の3つの不安に直面しています。
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費用の不透明さ 「この前はあの部品を全部交換したのに、別の部品で不具合?交換まで使用不可?この先、あと何回、いくら払えば終わるのかが見えない」
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効果への迷い 「今回、数百万かけて直すことに、本当に意味があるのか分からない」
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判断基準の欠如 「保守会社やメーカーの説明は、彼らの利益のための話ではないのか? 誰を信じればいいのか分からない」
【判断】延命か撤去か、現場で見える分岐点
実は、私たちのような現場の人間から見ると、
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「今後も修繕を続けて、大切に使うべき装置」
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「これ以上の延命はやめて、撤去や平面化を検討すべき装置」
この2つは、かなりはっきりと分かれています。
しかし残念ながら、後者に関しては「判断基準」が、直接表に出てくることはほとんどありません。 (立場によって、どうしても説明の重心が変わってしまう場面もあります。)
次回の記事では、この「プロが頭の中で行っている判断基準」について、踏み込んでお話ししようと思います。
【追記】現場の「本音の判断基準」を公開しました
この「現場作業員が頭の中で行っている判断基準」についてですが、あまりにも内容がリアルすぎるため、ブログ記事としてまとめるには少し時間がかかりそうです。
ただ、「今まさに理事会で揉めている」「来月の総会までに答えが欲しい」という切実な声も多くいただいています。
そこで、私の「現場歴10年の全知識」を体系化した具体的な解決マニュアルを、先行してNoteで公開することにしました。
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「50万円の見積もり」を〇〇円にする具体的な基準
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あの部品の原価は〇〇円?見積もりが適正か見抜くための「原価リスト」
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点検報告書の「要交換」の本当の意味(翻訳シート)
これらを全て詰め込んだ、「理事会でそのまま配れる資料」です。
もしあなたが今、手元の見積書を見て頭を抱えているなら、次のブログ更新を待つよりも、まずはこちらを読んでみてください。 50万円のハンコを押す前に読むだけで、元は取れるはずです。
関連リンク
▼前回の駐車場メンテナンス員の本音記事はこちら


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